最高裁判所に傍聴に行ってきたよ

最高裁に傍聴に行ってきたので、記事を書く気になりました。daminです。

ずっと真面目な内容しか書いてないけど、今回は内容が内容なので、そこそこ真面目に書きます。

例のやつ。意外と高いところにあり、カメラを頭上に構えないと撮れない。

傍聴に行こうと思ったきっかけ

最近、法律を勉強していたからです。

そのきっかけは覚えていないんですが、なんか急に法律に呼ばれている気がして始めました。

ただ漫然と勉強してもしょうがないなあと法律系の資格を探し、八士業のひとつである行政書士を目指して勉強を始めました(この受験記は合格通知が来てから書きます)。

行政書士試験で出題される法律は大きく言えば憲法民法行政法国家行政組織法行政不服審査法行政事件訴訟法国家賠償法)、商法、会社法です。そしてそれぞれの分野で最高裁判例がかなり重要で、また面白いです(条文そのものよりずっと多いので勉強は大変ですが)。

たとえば、公衆浴場どうしの距離制限は合憲(最大判昭30.1.26)だが薬局どうしの距離制限は違憲最大判昭50.4.30)とか。その理由も含めて面白いです。

公衆浴場距離制限事件:裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

薬局距離制限事件:裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

 

勉強を進めるうちに裁判って意外と面白そうだな~と思い、東京に行く用事ついでに最高裁の傍聴に行くことにしました。

 

傍聴した事件

今回の最高裁判決のリンク:

裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan

 

上のリンクにある通り、殺人事件です。

被告人の妻が頸部圧迫により窒息死したのですが、第1審では、それが被告人が頸部を圧迫したためなのか、妻の自殺によるものなのかという事件性が争点になりました。

1審判決では公訴事実どおりに犯罪事実が認められ、被告人は懲役11年に処されました。しかし弁護側は、1審判決の理由に不意打ちがあるとして訴訟手続の法令違反を主張したほか、妻は自殺したものであるとして事実誤認を主張をして控訴をしました。

第2審では訴訟手続の法令違反はなく、また自殺の主張は殺人の事実に合理的な疑いを挟むものではないとして、事実誤認はないとして控訴を棄却しました。

弁護側は憲法違反、判例違反、訴訟手続の法令違反、事実誤認を主張し上告をしました。

入廷まで

13時10分から10分間だけ傍聴整理券が配布されるので、13時12分くらいに行くとすでに多くの人が並んでいました。それだけ注目される判決なのか、と心が引き締まりました。整理券の「最高裁判所」の文字にも威圧感があります。

結果、38個の傍聴席に124人の傍聴希望者が集まり、コンピュータによる抽選が行われました(先着順ではない)。3.3倍なのでさほど期待はせず待っていると、私の番号が呼ばれました。「当たるんかい」と心の中で思いながら当選者の列に並びました。落選者はここですぐ帰らされます。

階段を結構登って建物に入り(車いすの人はどうするんだろう)、ロッカーに荷物を預けるよう言われました。法廷に持ち込めるものは筆記用具、傍聴券及び貴重品のみなので、それ以外をロッカーに預けます。携帯電話等の法廷への持ち込みは厳禁です(そもそも裁判所敷地内での撮影や録音は禁止ですが)。その後金属探知機を通り、傍聴人待合室に入りました。

傍聴人待合室(裁判所Youtube https://youtu.be/LDtWXuM1XSQ?t=347 より)

いい感じの椅子です。窓がデカく天井も高いです。ここで今回の事件に関する傍聴人向けの資料が渡されます。

数分待つと、法廷に移動するよう案内されました。第一小法廷に向かう途中で床がカーペット地になったことに驚いたりしながら、入廷しました。法廷内もカーペット地です。結構フカフカです。

法廷内はやはりかなり荘厳な雰囲気で、司法権のトップにあることを否応なく感じさせられました。

裁判所書記官が最初に入室しており、次に私たち(一般の)傍聴人、報道機関の傍聴人、検察官、弁護人、最後に裁判官が入室しました。裁判官入室時には慣例として全員起立し、礼をします。

その後報道機関の撮影時間が二分間設けられます。といっても動画なのでシャッター音が聞こえるわけでもなく、全員が二分間音もなくただ座るという時間が流れます。

その時間が終わり、撮影者が退廷したことを職員が報告すると、裁判長が開廷を宣言しました。

開廷中

今回は口頭弁論ではなく判決なので、裁判長が判決文を読み上げるのみで終了します。

早速裁判長が「主文 原判決を破棄する。本件を東京高等裁判所に差し戻す。」と宣言し、報道機関はドタドタとダッシュで退廷しました。これが速報になります。

そして次に判決理由が言い渡されました。

まず、憲法違反や判例違反についてはこれを認めませんでした。刑事訴訟法405条では憲法違反又は判例違反の場合上告できると定めており、したがって本件はこれら上告理由にあたりませんが、裁判官の職権をもって調査したところ、原判決(第2審判決)の破棄が認められました。

被害者Aさんの前額部には挫裂創がありました。原審(第2審)では、自殺を前提とすればこの挫裂創を負った後に自殺を含めた何らかの行動をしたことになりますが、その際に痛みで額をおさえ、また顔に血液が流れて手や物で血液を拭うはずであるとしました。そして搬送時の写真には流血の跡がなく、手にも血液が付着しておらず、血液を拭った形跡のある物も見つからないことから、Aさんは挫裂創を負った時点で死亡したと判断しました。

しかし本審ではこれを審理不十分と判断しました。検察官がAさんの顔に血液が流れた跡がないと主張した際に裁判所は釈明を求めるなどのことをせず、写真証拠をもって血痕がないと認定しました。しかしこの写真も挫裂創周辺部しか写っていなかったり、不鮮明だったりで顔面の血痕の有無の判断は困難なものでした。顔面の血痕が存在するとすれば原審の推認の強い支えはなくなります。

以上の理由から血痕の有無やそれと自殺の主張との関係について原審での審理不十分が認められ、重大な事実誤認の疑いがあり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められました。

閉廷後

理由の読み上げのあとすぐに裁判長が「以上である。閉廷します」と宣言し、退廷しました。

私たちも退廷し、荘厳な雰囲気の建物内を歩き、ロッカーの荷物を取り、長い階段を下りて、最高裁をあとにしました。

門のまわりには報道機関が十数名集まっており、スマホを見ると先の判決の報道が既に多くのメディアで報じられていました。

まとめ

  • 法律を勉強すると、裁判傍聴がたのしい。
  • そもそも法律が面白い。
  • 予約制や先着制ではないので、傍聴できるチャンスは公平に与えられている。
  • 一応ジャケットを着用していてよかった。まさか白シャツにジーンズでは入れない。スーツを着用までは義務ではないが、一応それなりの服装はした方が良い。
  • 裁判所の職員は意外と優しい。すごく丁寧に対応してくれる。でも威厳もある。
  • 「著しく正義に反する」を裁判長が本当に言う。かっこいい。

こんなところです